ネクストテーマ・コラム

結婚だけでは足りない社会になっている

― 「一人か、結婚か」しかない日本の制度が、現実に追いついていない。 ―

増えているのは、結婚しない人ではなく、結婚という一つの型だけでは受け止めきれない関係だ。日本に必要なのは、人を結婚へ追い込む制度ではなく、すでにある関係を制度の外側に置き去りにしないための新しい器である。

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日本の制度は、まだ二択に寄りすぎている

日本の制度は、今もかなり強く「結婚しているか、していないか」という二択に寄っている。結婚していれば、家族として多くの場面で扱われる。一方、結婚していなければ、たとえ長く生活を共にしていても、制度上は他人に近い扱いを受けることがある。

現実には、結婚はしないが長く連れ添う関係、再婚は望まないが一緒に暮らす関係、同性同士の関係、老後をともにする同居、血縁ではないが互いに頼り合う関係など、すでに多様な形が存在している。制度がそれを見ないままでいれば、実質的に支え合っている関係まで、弱い立場のまま放置されることになる。

第2の関係制度という考え方

そこで必要になるのが、結婚とは別の公的な関係制度である。ここでは仮に、ペアリング登録制度、あるいは第2の婚姻制度と呼ぶ。婚姻制度ほど重くはないが、単なる同居や口約束よりは確かな関係として、社会がその存在を認める仕組みだ。

対象を結婚の前段階に限る必要はない。事実婚として暮らす人、同性同士の関係、再婚を望まない人、老後をともにする二人、親族ではないが長く共同生活を送る人など、現実に成立している関係を制度の中へ組み込むことが重要である。

結婚を増やすための仕組みではない。関係を制度の外に置き去りにしないための仕組みである。

フランスのPACSから見えるヒント

参考になるのが、フランスのPACS(連帯市民協定)である。PACSは、結婚とは別に、二人の成人が共同生活を営む関係を契約として位置づける制度だ。結婚よりも軽く、単なる同居よりも権利と義務を持つ、中間的な制度として機能している。

日本がそのままフランス型を導入すればよい、という単純な話ではない。家族観、戸籍、相続、税制、医療や介護の実務がそもそも異なるからだ。それでも、結婚だけにすべてを背負わせず、結婚以外の関係にも一定の公的な位置づけを与えるという発想は、日本でも検討する価値がある。

どこまで認め、どこからは分けるか

制度設計で大切なのは、婚姻制度と同質のものにしすぎないことである。あまりに軽ければ意味がない。だが婚姻と同じ重さを持たせれば、結局はもう一つの結婚になってしまう。

同一世帯としての登録、緊急連絡先としての優先扱い、医療や介護の場面での説明・同席、住居契約や民間サービスでの関係証明などは、比較的導入しやすい領域だ。一方、自動的な相続権、親族関係の発生、子の親権や扶養義務などは、慎重な整理を要する。

軽さと確かさ。その両方をどう両立させるかが、第2の関係制度の核心である。

結婚を壊さず、選択肢を増やす

この提案は、結婚制度を否定するものではない。結婚を望む人には、これまで通り婚姻制度がある。その安定性や重みは、社会にとって今後も変わらず重要だ。

ただ、すべての関係を結婚という型に押し込む必要はない。結婚という強い制度と、何もない関係の間に、もう一つの公的な器を置く。そうすれば、人は制度に無理やり自分を合わせるのではなく、自分たちの関係に合った制度を選べるようになる。

家族の形を広げるとは、家族を曖昧にすることではない。現実に存在している関係を、社会がきちんと見える形にすることである。