第一の矢
人を育てる国へ

2人目を持ちやすい国へ

私たちは、教育費の実質無償化と子ども手当の上乗せを、17歳以下のすべての子どもにではなく、あえて「2人目以降」に絞って行うことを提案します。

理由は、それが少子化対策として最も効果的だと考えられるからです。

この後、その根拠を、公的な統計データに基づいて順番に説明します。


結論:なぜ「2人目以降」なのか

子どもを持つかどうかの決断(0→1)は価値観の領域だが、2人目を持つかどうかの決断(1→2)の多くは、教育費・年齢・体力・生活の質といった「条件」の領域にある。条件は、政策で動かせる。


国の調査でも、理想の子ども数を持たない最大の理由は一貫して「経済的理由」であり、妻の年齢が若い層ほどその割合は高い。


すでに子どもが一人いる世帯は約486万世帯。その中でも第一子が10歳以下の約200万世帯は、2人目を検討できる時期にある、最も動かしやすい層だ。


既存の多子世帯向け支援策の多くは、条件が複雑で実効性が低い。だからこそ、教育費と子ども手当の2点に絞った、分かりやすい支援が必要だ。

以下、それぞれのデータを見ていきます。


① データが示す「経済的理由」の重さ


「本当は何人欲しいか」という理想と、「実際に何人を持つつもりか」という現実の間には、差があります。国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査によると、夫婦が実際に持つつもりの子どもの数は平均2.01人。これは、同じ調査で示される「理想の子どもの数」を下回っています。つまり、多くの夫婦が、理想より少ない人数で妥協している、ということです。

この差が生まれる理由として、最も多く選ばれ続けているのが「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」(総数56.3%)です。とくに妻の年齢が35歳未満の若い層に限ると、この回答は8割前後にまで達します。



一方、2025年の調査(20〜30代共働き夫婦対象)では、理想の子どもの人数として「2人」が53.2%で最多となりました。「一人っ子はかわいそう」という規範は薄れつつありますが、「二人育てたい」という願望自体は、まだ多数派として残っています。



つまり、多くの家庭にとって「2人目はいらない」という価値観の変化ではなく、「2人目は欲しいが、お金が理由で諦めている」という現実的な制約が壁になっている、ということです。


では、この壁に直面している家庭は、どれくらいの規模なのでしょうか。18歳未満の子どもがいる世帯は約983万5千世帯。そのうち約49.3%、およそ486万世帯が「一人っ子」です。

このうち、第一子が10歳以下の世帯は約200万世帯と推計されます。この層は、2人目を検討できる時期にあり、かつ教育費や子育てにかかる負担を最も具体的にイメージできる家庭です。私たちが「17歳以下全員」ではなく「2人目以降」に絞る理由は、ここにあります。すでに子育てを経験している家庭だからこそ、政策の効果が最も届きやすいのです。


② そもそも、教育費はどれくらいかかるのか


かつて、高校を卒業すれば子育てはひと段落でした。しかし今は違います。大学・専門学校への進学率は、2024年時点で合計75.9%。もはや「大学まで行くのが当たり前」の時代であり、子育てのゴールラインは、高校までではなく、その先まで伸びています。



保育園から大学卒業まで、公立・国立大学基準で試算すると、子ども一人当たりの教育費はおよそ800万円に達します。

段階 期間 総額(公立/国公立)
幼稚園 3年 約49万円
小学校 6年 約211万円
中学校 3年 約162万円
高校 3年 約154万円
大学(国公立) 4年 約243万円
合計 19年 約819万円

出典:文部科学省「子供の学習費調査」、日本学生支援機構「学生生活調査」等をもとに試算。

教育費だけ見ても、この800万円という負担が、2人目、3人目を考えるたびに、もう一度そのままかかってきます。これが、多くの家庭が2人目を「条件次第」だと考える最大の理由です。

負担が増えるのは教育費だけではありません。子どもが増えれば、住まいもそれに合わせて広くする必要があります。教育費ほど語られませんが、これも「2人目」を迷わせる現実的なハードルの一つです。次に、この2つの負担にどう向き合うか、私たちの提案を見ていきます。


③ 私たちが提案する2つの支援


2人目、3人目を考えたときの育児費・教育費の負担を軽くし、「もう一人」を後押しする社会を目指します。

  • 2人目以降の大学・大学院・専門学校の入学金・授業料を、国立大学水準まで無償化
  • 2人目以降の子ども全員に、0歳から6歳になるまで、児童手当に月2万円を上乗せ(2人目子ども手当)

この制度は18歳以下の子供の数に関係なく、2番目以降であれば誰でも何人でも受けられる補助です。

私立の教育機関に通った場合の差額は、自己負担となります。大学生・専門学校生は原則22歳まで、大学院生は24歳までが対象となります。学校に在籍した期間のみ支給されます。


2人目以降1人あたりでは、合計どれくらいの支援になるのか。モデルケースで見てみます。


支援内容 前提 支援金額
教育費無償化 大学・大学院・専門学校、入学金+授業料4年分、国立大学水準 約243万円
2人目子ども手当 月2万円×0歳〜6歳(7年間) 約168万円
合計(モデルケース) 2人目一人あたり 約411万円

※ 進学先(国立・私立・専門学校)によって実際の教育費支援額は変わります。上記は制度の規模感を示すための試算です。

④ 予算・効果、そして何が生まれるか


既存の大学無償化(3人以上世帯分)は、既に国の予算に組み込まれています。私たちが新たに求めるのは、対象を2人目まで広げる差額分です。


時点 教育費 2人目子ども手当 合計
来年(初年度) 約0.39兆円 約0.80兆円 約1.19兆円
6年後 約1.09兆円 約1.05兆円 約2.14兆円
10年後 約1.09兆円 約1.15兆円 約2.24兆円

※ 教育費は、2人目以降の新入生の入学金と、在学者全員の授業料を積み上げた金額です。初年度は大学・専門学校1年生の分のみを対象とし、学年進行とともに対象が広がります。4年目に大学(1〜4年)と専門学校(1〜2年)が定常化し、5年目に大学院修士1年、6年目に修士2年が加わることで、6年後に完全な定常額(約1.09兆円)に達します。進学者数は、来年の新入生数が今後も一定で続くものと仮定し、人口減少による目減りは見込んでいません。
※ 2人目子ども手当は、既存の0〜6歳の2人目以降の子ども(約309万人)を初年度から一斉支給の対象とし、そこに政策効果で新たに2人目を持つ世帯が増えていく分(10年で計240万人)を上乗せしています。6年後の数値は、5年後と10年後の間の線形補間による概算です。
※ こども家庭庁の年間予算(約7.5兆円)と比べても、10年後でも予算全体の3割弱に収まる規模です。
※ 国の一般会計歳出総額(約122.3兆円)の1.0〜1.8%、国の税収(約83.7兆円、いずれも令和8年度)の1.4〜2.7%程度に相当する規模です。
※ 政府の「こども未来戦略・加速化プラン」(3.6兆円規模)と比べても、同水準の規模感です。

財源の詳しい内訳は、こちらでご覧いただけます。

財源をどう賄うか →

では、この予算は、少子化にどれくらいの効果をもたらすのか。


①で見た通り、「本当は2人目が欲しい」という家庭は多数派です。しかし、実際に一人っ子にとどまっている世帯は約486万に上ります。教育費という最大のハードルを外し、2人目子ども手当を組み合わせたとき、この「欲しいのに選べない」という差は、どれくらい埋まるのでしょうか。

2025年の出生数は67万1,236人、合計特殊出生率は1.14でした。このうち「2人目以降」の出生は全体の約54%・約36.2万人です。上の表と同じ「2人目以降世帯が5年で25%増、10年で50%増」という想定に沿うと、出生数と出生率は次のように動くと見込まれます。

時点 2人目以降の出生数 増加分 合計特殊出生率(概算)
来年(初年度) 約38.0万人 +約1.8万人 約1.17
5年後(2人以上世帯+25%) 約45.3万人 +約9.1万人 約1.29
10年後(2人以上世帯+50%) 約54.3万人 +約18.1万人 約1.45(理論値)

※ 上記は出生数の増加をそのまま比例させた概算であり、厳密な人口動態モデルではありません。
※ 海外の実例と比べると、より慎重な見立ても必要です。ハンガリーはGDP比約5%の家族政策予算を10年以上投じ、合計特殊出生率を1.25から1.59へ押し上げましたが、これは私たちの提案の20〜30倍の予算規模です。同じ比率で単純計算すると、私たちの提案による押し上げ幅は+0.02程度というのが機械的な下限であり、+0.31(理論値)というのは達成できれば歴史的な成功にあたる上限です。


現実的な目標としては、10年で合計特殊出生率を1.14から1.20〜1.30程度に引き上げることを目指すのが妥当だと考えています。それでも、国際的に見て十分に意欲的な数字です。

2025年、日本の人口は出生数と死亡数の差(自然減)で約91.8万人減少しました。19年連続のマイナスです。この提案が10年後に生む「+18.1万人」という押し上げ効果は、その自然減少の約2割に相当する規模です。少子化のすう勢そのものを反転させる政策ではありませんが、何もしなければさらに加速していく人口減少のカーブに、確実にブレーキを一つかける規模の効果だと言えます。


そして、この投資は数字だけでは測れないものも生み出します。


教育費や子育てへの不安が小さくなれば、「本当は2人目が欲しい」「本当は3人目も育てたい」と思っている家庭が、一歩を踏み出しやすくなります。

また、多くの家庭は、将来の教育費に備えて長い時間をかけて資金を準備しています。その不安が軽減されれば、浮いた分は住宅、旅行、外食、習い事、自己投資などへ向かい、地域のお店や企業にもお金が回ります。


私たちは、この提案を、未来への支出ではなく「未来への投資」だと考えています。教育費負担の軽減は出発点であり、健康インフラや地方活性化と組み合わせることで、効果はさらに大きくなります。