少子化対策に積極的に財政を振り向けるのなら、2人目を後押しする

少子化対策として今いちばん効果が見込めるのは、「2人目」を後押しする政策です。
私たちは、0〜2歳の「児童手当乳幼児加算」と2人目以降の「こども学資積立」により、これを最速で実現する道筋を提案します。

少子化対策と子育て支援は別物です

少子化対策と子育て支援は、よく混同されますが別ものです。
子育て支援は、すでに生まれた子どもを育てる家庭を支える施策で、多子世帯の大学無償化や児童手当の高校生までの支給延長がこれにあたります。
少子化対策は、子どもを持つかどうか・2人目を持つかどうかという決断そのものを後押しする施策です。
この2つを分けて見ると、国がこれまで手厚くしてきたのは主に子育て支援であり、少子化対策そのもの、なかでも「2人目」を持つ決断を後押しする施策は手薄だということが見えてきます。

なぜ「2人目」なのか

子育て家庭の51%が一人っ子で、その8割は本当は2人以上を望んでいる。
この差が、少子化対策で最も見過ごされているポイントです。日本の出生数は1990年の約122万人から2025年には約69万人まで減り、このまま推移すれば2035年には55万人前後になると推計されています(厚生労働省「人口動態統計」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」)

出生数の推移と将来推計

子育て家庭のうち1人っ子家庭は51.4%で最多である一方、本当は2人以上の子どもが欲しいと考えている家庭は80%を超えています(総務省「令和4年 就業構造基本調査」、国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査」)
1人っ子家庭は子育て世帯の半数を占める最大の層であり、この家庭が2人目を持てるかどうかが、出生数全体の増減を左右する一番大きな要因になります。理想より子どもの数が少ない理由として最も多く挙げられているのは「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」(56.3%)であり、経済的な不安が2人目をあきらめる最大の理由になっています。

現状の子育て家庭の子供の数と本当は欲しい子供の数
「2人目」をあきらめた主な理由

1人っ子家庭が2人目を持てたら、出生数はどれくらい変わるか

児童のいる世帯は全国に約992万世帯あり、そのうち1人っ子家庭は約489万世帯で、子育て世帯のほぼ半数を占めます(厚生労働省「令和4年国民生活基礎調査」)。子どもの年齢を0〜17歳の範囲でおおまかに均等配分すると、子どもが6歳以下(未就学児)の1人っ子家庭はおよそ190万世帯と見込まれます。
かりにこのうち1割が2人目を授かれば、単純計算で年間約19万人の出生数増加に相当します。
このデータをもとに計算すると、19万人の上乗せは現状の年間出生数(67.1万人)を約86万人まで押し上げる規模にあたり、合計特殊出生率は現在の1.14から1.45程度まで改善する計算になります。

※ 190万世帯・19万人という数字は、子どもの年齢構成を単純に均等配分したうえでの概算であり、実際の年齢分布や出生行動を精緻に反映したものではありません。

私たちの提案① 児童手当乳幼児加算

「2人目をあきらめる」理由として最も多く挙げられているのが、子育てや教育にかかる費用の負担です。
国の幼児教育・保育無償化は3歳児クラスからが対象で、0〜2歳の3年間は、東京都など独自に上乗せしている一部の自治体を除き、多くの家庭が保育料を負担しています。加えてこの時期は、育児休業給付金や出生後休業支援給付金があっても休業前の収入を完全には補えない期間も重なり、家計が圧迫されやすいタイミングです。
児童手当乳幼児加算は、国の無償化が始まる3歳になるまでの3年間に的を絞り、①休業中の収入減を補う、②保育料を含む育児関連の出費を支える、③「経済的に安心して2人目を迎えられる」という後押しをする、という3つの役割を同時に果たすことをねらいとしています。

  • 支給額:月5万円
  • 支給期間:0〜2歳(3年間)
  • 第一子から支給(世帯年収960万円未満は月5万円、960万〜1,200万円未満は月25,000円、1,200万円以上は支給なし)

私たちの提案② こども学資積立

高校卒業後に大学・専門学校へ進学する割合は、1990年の36.3%から2024年には75.9%まで上昇しました(文部科学省「学校基本調査」)。子育てのゴールラインは、すでに高校卒業から大学・専門学校卒業へと動いています。
多子世帯への大学無償化はすでに実現していますが、1人っ子家庭が2人目を持つかどうかを考える段階でも、進学費用の見通しが立つかどうかは大きな判断材料になります。
私たちは、2人目以降を対象に、進学費用を国があらかじめ積み立てておく制度として「こども学資積立」を提案します。

大学・専門学校への進学率の推移
  • 対象:2人目以降の子ども(すでに生まれている18歳以下の子どもを含む)
  • 積立期間:1歳から17年間で総額約300万円を国が積み立て
  • 進学期に支給


児童手当乳幼児加算(月5万円×3年間=180万円)とこども学資積立(総額約300万円)を合わせると、2人目の子どもが0歳から17歳になるまでに国から受け取る直接支援は、合計で約480万円になります。

2026年8月、シンガポールは子ども1人につき17歳になるまで最大880万円を給付する新制度を発表しました。出生時の一時金だけに頼らず、年齢に応じて給付を分散させる設計は、私たちの提案と方向性を共有しています(詳細はページ末尾 ▶)。

国の対策の現状

国がこれまでに実施・検討してきた主な施策は、次のとおりです。

時期施策状況
2023年12月こども未来戦略「加速化プラン」(2028年度までに3.6兆円増額を閣議決定)実施中
2024年10月児童手当改正:所得制限の撤廃、第3子以降月3万円、高校生まで支給延長実施済み
2025年4月出生後休業支援給付金:両親ともに一定期間育休を取ると手取り10割相当に実施済み
2025年度〜多子世帯(子ども3人以上)の大学等授業料無償化(所得制限なし)実施済み
2025年度男性の育休取得率が50.9%に達し、政府目標(50%)を初めて達成進捗中
報道ベース自民党内で「第2子以降の児童手当増額」を検討する方針検討段階(未実現)

出典:内閣官房「こども未来戦略」、こども家庭庁資料、厚生労働省、日本経済新聞の報道等に基づく。

児童手当の第3子以降加算や多子世帯の大学無償化はすでに実現していますが、これらは子育て支援(すでに生まれた子どもを育てる家庭への支援)にあたり、1人っ子家庭が2人目を持つかどうかという決断そのものを後押しする少子化対策ではありません。
「2人目を後押しする」という方向性は、自民党内の検討方針として報じられているのみで、法改正にも予算化にも至っていないのが現状です。

現実的な進め方

少子化対策は、着手が早いほど効果が大きくなります。こども家庭庁単独で完結する制度改正(児童手当乳幼児加算など)は、来年度からすぐに動かせます。文部科学省・財務省などとの調整が必要な項目(私立高校支援の見直し、既存奨学金の付け替えなど)も、合意形成が進めば、そこに財源を積み増せます。

こども家庭庁が所管する児童手当の所得制限を、実際に運用されていた基準(世帯年収960万〜1,200万円は特例給付、1,200万円以上は支給なし)で復活させれば、その財源(約0.09兆円)を次年度から直接充当できます。さらに、いま物議を醸している私立高校授業料補助を適正化すれば、その財源もこども家庭庁に付け替えられます。動かせるところから財源を積み上げていく、それが最も現実的な進め方です。

私立高校補助金問題を詳しく見る ▶

私たちは、動かせるところから、今すぐ実行することを推します。

少子化はすでに国難と呼ぶべき水準にあります。この状態が進めば、働き手の減少による経済成長の鈍化、社会保障制度の持続可能性の低下、地域社会や防衛・治安を支える人材の不足など、国力そのものが低下していきます。だからこそ、児童手当の所得制限復活のように来年度から動かせるものは、今すぐ着手すべきです。

財源の詳しい内訳と、こども家庭庁の予算だけで完結できる部分・他省庁との調整が必要な部分の切り分けは、財源を検証するページで詳しく解説しています。

財源の検証を見る ▶

参考試算:対策を先送りした場合の人口構成

30年後の日本の人口ピラミッド比較:少子化放置シナリオと少子化対策実施シナリオ

この比較から分かるのは、少子化対策の有無で30年後の人口構成そのものが変わるということです。放置シナリオでは若い世代の層がさらに細り、支える側と支えられる側のバランスが今以上に崩れます。一方、対策によって出生率を回復できた場合は、若年層の厚みが保たれ、将来の働き手や社会保障の担い手を確保しやすくなります。ピラミッドの形が変わるかどうかは、この10年の政策判断にかかっています。

本図は総務省「人口推計」の日本人人口を基にした簡易試算によるイメージ図です。放置シナリオは合計特殊出生率が2055年にかけて1.0まで低下すると仮定した場合の概算で、実際の人口動態を保証するものではありません。

【参考】シンガポールの新子育て支援策(2026年8月発表)

2026年8月23日、シンガポールのローレンス・ウォン首相は建国記念日演説で、子ども1人につき17歳になるまでに最大62,000シンガポールドル(医療・教育口座への加算を含めると約70,000シンガポールドル、日本円で約880万円)を給付する新制度「SG Child Support Package」を発表しました。2027年4月から、現行のBaby Bonus制度に代わって導入されます。

給付金額支給時期
出生ギフト10,000Sドル出生後1年以内に2回に分けて支給
チャイルドクレジット計32,000Sドル1〜16歳、年2,000Sドルずつ
子供口座(CDA)ファーストステップ給付金5,000Sドル+政府マッチング拠出(最大5,000Sドル)16歳の年末まで
中等後教育口座への上乗せ10,000Sドル17歳時

出生順位で金額を分けない、全員同水準の設計です。あわせて、終日保育施設の月額利用料を150シンガポールドル(約1.9万円)まで引き下げ、子どものいる世帯を公営住宅の入居審査で優先するなど、現金・保育・住宅を同時に動かすパッケージになっています。

シンガポールは一人当たりGDPで世界トップクラスの豊かな国です。それでも合計特殊出生率は0.87まで低下し、2025年の出生数は建国以来初めて3万人を割り込みました。2026年には65歳以上人口が全体の約20%に達し「超高齢社会」入りしたとも報じられています。豊かさと出生率は別問題であることを示す事例です。

出生時の一時金に頼らず、0歳から17歳まで年齢に応じて給付を分散させる設計は、私たちが提案する乳幼児加算の年齢傾斜構造や、「子育て支援のゴールラインは高校・大学まで伸びている」という指摘と方向性を共有しています。

出典:Bloomberg、Mothership.SG(2026年8月24日)、中央日報日本語版(2026年8月25日)の報道に基づく。